05-01 債務整理に必要なコト
借金生活を解決するために、自ら積極的に勉強している人もいます。しかし、一生懸命学んできても、実際の債務整理ではその知識を活かす場がない場合もあります。勉強して得た情報に誤りがあることもあるし、机上の知識を実務に落とし込むには無理があることも少なくありません。
事前に徹底して知識を得ようとするタイプの債務者は、少しでも不安があると行動に踏み切れず、実際の相談するまでにかなりの時間を要します。一方、予備知識を全く持たないタイプの債務者の場合、思い立った途端に行動します。何も分からないので全てお任せしますというタイプです。
どちらが良いかとの質問には、どちらにも問題があると答えるしかありません。「事前勉強型」の場合、知識を得れば得るほど不安が募り、行動に移せなくなるか、自分で対策を立てて行動してしまうかの何れかになることが多いです。「お任せ型」の場合は深く考えることをしないため、専門家との間でトラブルになる傾向があります。
勉強することは悪いことではありませんが、実際の現場においては専門家の指示を仰ぐほうが良いでしょう。債務整理にはどのような種類があって、その違いはどこなのか、また相談する際に気をつける事とは、など大枠を学んでおくだけで構いません。その上で自分の得た知識と専門家の意見に相違があるようであれば、質問してみましょう。
大事なのは事前知識だけではありません。何も考えずに行動するだけでもありません。「基礎知識を得て行動する」ことであり、「専門家の意見に耳を傾ける素直な心」を持つことです。
05-02 債務を整理する4つの方法
借金生活から抜け出すための債務整理の方法には4つの種類があります。それぞれの概要を知ることで、最適な解決案が出てくるかも知れません。
「特定調停」は専門知識を持たなくても出来る解決法として注目されています。裁判所に債権者との間に立ってもらい、借入の減額や今後の返済方法などを話し合います。費用が安く、調停が終わるまでは返済する必要がありません。
弁護士などの専門家に各債権者との交渉を委ねるのが「任意整理」です。債務者の返済能力に合わせて和解する方向に持っていきます。法律的な知識を活かして交渉してくれるので、債務者の現状に適した解決方法を探ってくれる利点があります。
「個人再生」は裁判所を通して借金の総額を減らし、減額された分の借金を改めて分割で返済していく制度です。将来に渡って一定の収入を確保できる見込みがある場合などは、自宅を手放すこともありません。免責を受けるまでの間、就業できる職種に制限が設けられることもありません。他の方法に比べると比較的新しいものですが、再建型の解決方法としての効果にはかなりの成果が上がっています。
税金や公共料金などを除いて全ての借金が棒引きにされる「自己破産」は、裁判所に自己破産を申し立て、破産宣告の後に免責を受けなければ借金が免除されることはありません。免責を受けるまでの間、特定の職業や資格を得ることはできず、自宅などの財産も没収されるものもあります。最も有名な方法のため、誤解やデマにより、ネガティブな印象を抱いている方も少なくありません。
05-03 家計で分かる債務整理の方法
借金の整理がしたくても、破産の不安があると専門家に相談することを躊躇ってしまうこともあります。相談する前に、自分で診断しては如何でしょうか。
初めに1か月分の収支状況を把握しましょう。収入は手取りで計算し、複数の収入がある場合はすべて合算して下さい。支出にはクレジットやキャッシングの支払いを除いた固定費や携帯電話代、教育費のほか、家賃や住宅ローンがあればそれも含めて下さい。任意整理や個人再生で債務整理する場合、原則3年間で分割返済する決まりです。つまり、収入と支出の差額の36回分が返済可能な借入額ということになります。但し、差額をそのまま返済可能額と考えるのは危険です。3年間もあれば、予測不能な出費にも対応するための費用も考えておく必要がありますので、返済可能額は差額の36回分の中の8割程度としておくのが良いでしょう。
現在の借入総額が返済可能額を下回っている場合、これ以上の借金をしないという前提であれば任意整理で解決することが可能と考えて問題ないでしょう。その反面、返済可能額を上回ってしまった場合、任意整理を使った債務整理は難しいかもしれませんが、自己破産しかないと諦めるのは早すぎます。利息を払い過ぎている可能性もあるし、返済期間を4~5年に延長してもらうこともできます。任意整理が出来なくても個人再生ならば解決できるかも知れません。
この結果を持って専門家に相談に行くと相手が現状を理解しやすくなり、自己破産以外の解決策に導いてくれる可能性もあります。
05-04 債務整理を上手に進める
長引く不況を反映してか、「生活費の補填」をきっかけに借金生活に落ちていく家庭が少なくありません。生活費を補うために作った借金を別の借金で返済することもあります。返済のための借金を期日までに融資してくれるところがあれば、更に別の借金を重ねていき、気が付くと大きな借金を抱えてしまうことになります。
200万円程度までの比較的小規模な借金の場合、任意整理で解決できるかも知れません。裁判所を通さずに、直接債務者と交渉して借金額の減額や分割支払いに応じてもらう方法ですが、殆どの場合弁護士や認定司法書士が債務者の代わりに債権者と交渉します。専門家が間に立つことにより、返済の督促が止まる効果もあります。債権者に和解に応じてもらうには、無駄遣いを止め、不要な財産を処分するなどの犠牲を払う必要があります。裁判所を通じて同様の交渉をする特定調停を選ぶことも可能ですが、こちらは交渉を債務者が自ら行う必要があるため、交渉が不調に終わることもあります。
一方、借金額が膨大な場合、任意整理や特定調停を利用して生活の再建を図るのは非常に困難であると言わざるを得ません。そのような場合の最終手段として用意されているのが自己破産です。
自己破産によって借金が帳消しにされる代わりに、ブラック情報として記録されることで新たにローンを組むことが一定期間できなくなるなどの制約がありますが、これまでのお金に振り回される生活を改めることができます。二度と同じ過ちを繰り返さないよう、強い気持ちで生活する努力が求められます。
05-05 任意整理で債務を減らす
債務整理には複数のやり方がありますが、比較的小規模な借金の場合は任意整理が代表的です。返済のための借金を重ねて手詰まりになる前に手を打ちましょう。
裁判所を通すことなく、お金を借りた人が貸した人や会社に借金を減額してもらえるように交渉するのが、任意整理です。但し、借りた本人に減額を頼まれても応じる人や会社は殆どありませんから、弁護士や認定司法書士が本人に代わって交渉します。
減額の交渉は次の何れかの方法で行います。1つは払いすぎている利息がある場合、それを貸主に認めさせてから元本に充当し、残債を減らす方法です。グレーゾーン金利が撤廃されたことで、払いすぎた利息がある借主も増えています。もう一つは、借金を一括して返済する分、総額を減らして欲しいとお願いする方法です。この場合、別の金融機関から借入をしては意味が無いので、親や身内などからお金を集めるように話を進めます。
弁護士などの専門家が介入した場合、債権者には「介入通知」が送られます。介入通知を受け取った債権者は、これまでのように債務者に直接借金の返済を求めることが出来なくなります。
任意整理を行った場合、信用情報機関にいわゆるブラック情報として記載されます。その為、今後5年~7年は新たにクレジットカードを作ることができず、ローンを組むことができないと考えたほうが良いでしょう。但し、家族の信用情報までもがブラックになることはありませんから、クレジットカードを作ることも問題ありませんし、任意整理した人を家族カードの対象にすることもできます。